古の時代から、その尾根を、着のみ着のままの難民が
行きかってきた。その山脈は、国境だったから。



1/2
トユカチ山中腹の宿泊施設から、山頂にある天文台の設備を撤収しに行く。
クリスマスを返上のこの作業は、新年に持ち越された。
撤収を急ぐ理由は、トユカチからそう遠くない国境の向こうに、
敵国の戦車が用意されているからだ。


1/4
標高のためか、頭痛がしてはかどらない。
いくら大気が安定しているからといって、なぜこんな場所に
天文台を作ってしまったのだろう。何度となく国境が書き
替えられたこの地には、砦こそふさわしかったろうに。



1/5(最終日)
終了報告の為に、現場を撮影する。相棒は気分が悪くなって下山。
午後より一人で作業。

〔拡大図表示〕

ふと北を見ると、塔のような物が見える。塔だって?
塔の先端は空の彼方に消えている。…ストレスのせいだろうか?
残りのフィルムで撮影、別便にて送ることにする。


このフィルムは届かなかった。
作業員は相手国の情報員の疑いで監禁された。
その後見た者はいないが、塔は、天使回路のひとつだった。

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